Johnson Sabra 131

  ハイパワー・スピンキャスティングリールという、日本では想像もつかない製品が米国市場には存在しているのをご存じだろうか?

 現在ゼブコ社の『ビッグキャット』や『808』がこれにあたり、500gを超える超重量級の大型スピンキャストリールだが、これらはあくまでも置き竿用であってキャスト&リトリーブを繰り返すようなリールではない。

 最初のルアーフィッシング用大型スピンキャストリールと言えば、1960年登場のシェイクスピア社のワンダーキャスト『1796』と『1798』だろう。
 TY-BOブレーキと呼ばれるスタードラグ・ダイレクトドライブ方式が1796、レボルボブレーキと呼ばれるリングドラグ・ダイレクトドライブ方式が1798で、レベルワインド機構(スプールオシュレーティング機構)に15lbのナイロンラインを使用するヘビーデューティー仕様だった。
 シェイクスピア社は糸巻量を増加した1795をその後生産するが、高性能だったのは1960年代までのハイエンドモデルのみ。

 同年(1960年)、ジョンソン社から『130 Sabra』が発売され、これは最初にパワーシフト・ハンドル機構を搭載した大型スピンキャストリールで、15lbのモノフィラメントラインを標準装備し、最大20lbまでのモノフィラメントラインを使用することが可能だった。
 1961年には『130 Sabra』の小型モデルとなる『710』が登場。
 『710』にオシュレーション機構は搭載されなかったが、『710A』、『710B』とマイナーチェンジを続け、1979年に『710C』へ、1980年に『FORCE 315』、1982年に『FORCE 320』と進化を続けていく。

 ジョンソン社の大型モデルに話を戻そう。
 『130 Sabra』以降、オシュレーション機構を追加した『130A Sabra』、内部機構を強化した『130B Sabra』とマイナーチェンジを繰り返し、1974年にはジョンソン社の集大成とも言える傑作機『160 GUIDE』が発売される。
 『160 GUIDE』は1969年に発売された『150 COMMANDER』に初採用されたAccu-Cast機構を搭載した『130B Sabra』の正常進化モデルであり、12lbラインを360ftを標準装備していたが、20lbラインを230ftまで使用することが出来た。
 『160 GUIDE』に始まる『GUIDE』シリーズは、『130 Sabra』と『710』の関係と同じく、1976年に初のロープロファイル(低背型)モデルとなる小型の『155 GUIDE』、1977年に『160 GUIDE』のロープロファイルモデルの『165 GUIDE』が登場。
 その後、1979年に『165 GUIDE』の後継モデル『170 Seville』、小型の『155A GUIDE』を頂点に、1980年の『435 STRIKE』、小型の『415 STRIKE』はAccu-Cast機構が廃止され、『FREEDOM 440』、小型の『FREEDOM 420』はプリセットドラグとなり、ユーザー側でドラグ調整が出来なくなった。

 『130B Sabra』は『160 GUIDE』の登場でその血統が途絶えるかと思いきや、『160 GUIDE』発売以降もラインナップに残り続け、1979年に後継機『Sabra 131』が登場する。
 1980年には更に『FORCE 335』となるが、『FORCEシリーズ』は『Sabra 131』の廉価版であり、内部機構と素材が簡略化されている。
 1982年には最終モデルとなる『FORCE 340』が登場するが、『FORCE 335』のロープロファイルモデルというのが正しい。

↑カタログでもSABRA 131と710Cは兄弟機であるとわかる

 『Sabra 131』は、名実ともにSabraシリーズの最高傑作リールだろう。
 『160 GUIDE』以降のGUIDE系統には、メインシャフトとドライブギアのダブルドラグ機構が搭載されたため、ドラグをいくら強くしてもフルパワーでのリトリーブは出来ない。
 ダイレクト・リトリーブパワーとオートマチック・トランスミッション機構は『Sabra』シリーズだけのもの(後継機の『FORCE』含む)で、「スピンキャスティングリールには釣力がない」などという誤った認識はこの『Sabra』と『FORCE』シリーズだけには通用しない。
 スピンキャスティングリールの常識的なサイズ感をやや上回っているのは、ベイトキャスティングリールと同格以上性能を意識して設計されたためで、ローギアでありながらリトリーブスピードを上げるために同社最大の大口径ワインディングカップが採用されている。
 その強大なリトリーブパワーのため、『Sabra 131』には通常のスピンキャスティングロッドではなく、ベイトキャスティングロッドを組み合わせた方が良い。

↑本来ならオフセットしていないガングリップにしか取り付けられないが、
スミス社のストライクグリップには取り付けることが可能
他社のオフセットハンドルグリップはベルカバーが干渉するため、
取り付けることが出来ない

 6ftクラスのミディアム~ミディアムヘビークラスとの相性が良いだろう。
 個人的な見解では6.6ftよりも6ftがベストだ。
 ヘビー級のルアーは流石にトゥーハンドでなければ投げられないが、クランクベイトや巻き抵抗のあるスピナーベイトなども問題なく使える。
 本来ならベイトキャスティングリールを使うべきだろうが、せっかくなので今年は意識的に『Sabra 131』をメインで使ってみたい。
 もしかすると、自分でも今まで気づくことのなかった『スピンキャスティングリールの性能の真髄』を体験できるかもしれない。
 何らかの良い発表が出来ることを期待していて欲しい。

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