過去記事『謎が謎を呼ぶ!?ABU-MATIC152の謎を解明する考察(マニア向け)』

 偶には別の話題を…と思いつつも、あまりの衝撃に引っ張ります、ABU-MATICネタを!
ABU-MATIC 152
 1976年に北米向けに極少数が生産された、100番台唯一の下一桁2番のアブマティックです。
 詳細が一切不明、モデルナンバーのお約束では吊り下げ左巻きのはずのこのリール、先日フルメンテナンスを兼ねてオーバーホールをすることとなったのですが、妙なことに気が付きました。
このリール、要はABU-MATIC 150をベースにした特別モデルなのですが、吊り下げて左ハンドルにして巻こうとすると、ちょっとした違和感が・・・。
調べてみると、捻りの入った純正のハンドルノブが逆の捻りです。
分り易く説明すると、ABU-MATIC 141や、アンダーロッドのABU 505等の捻りノブとは、捻りの方向が逆であるということ。
そして、ABU-MATIC 150と全く同じ向きの捻りノブであるという事です。
このリールの入手経緯をお話ししますと、もしも普通にeBayに出品されていたのならば、確実に1,000ドル超えのレアリールなわけですが、外装がボロボロの状態でモデルナンバーも不明でした。
 ABU-MATIC 145か155のジャンク品だろうと、部品取りにと思ってゼブコのスピニングリールとセットで格安入手したのですが、届いてみてビックリ!
 ABU-MATIC 152とベルカバーに刻印されているではありませんか!!
よくわからないままに、ハンドルを逆回転させようと思ったら、シンクロが掛かってからハンドルが止まる。
 正回転は普通に巻けてしまうので、前オーナーは普通のアブマティックのように使おうとしてアンチリバースのラチェットをいじったな?と思ったわけです。
 なにせ、下一桁が2番のナンバー。
 普通だったら、吊り下げの左ハンドルで使うはずのものですから、当然逆にセットされているアンチリバースラチェットを本来の向きに付け直してみたわけです。
 これで、吊り下げ左ハンドル仕様となりました。

 ただ、この時点では、まだラインを巻いていなかったので、全く気が付いていません。

 今回のオーバーホールで、初めてラインを巻いてみたわけですが、ドラグの動作を確認しようとラインを引出してみたら、ベルカバーの内側でローターが外れてしまうではありませんか!

 おかしい、このリールは何か変だ!?

 どうやっても、ドラグを使うと(ラインを引き出されると)ローターが外れてしまいます。
 これではリールとして全く機能しません。
 ラインを巻くことはできますが、ドラグを強く締めても、負荷が掛かればいとも簡単にローターが外れてしまうのです。

 ちょっとまてよ・・・このリールはそもそも吊り下げて使うのではなく、普通にオフセットグリップのハンドルの上につけて使うんじゃないのか?

 最初に入手した状態は、吊り下げ仕様でもなんでもなく、普通のABU-MATICと同じセッティングでした。
 前オーナーがいじったのではなく、このリールはそもそも通常のABU-MATICと同じ仕様なのではないか?
 こんな考えが頭をよぎります。

 分解して初めてわかる内部構造。
 このリール、吊り下げで使うことを前提にした設計が全くなされていません。
 そもそも、吊り下げて使用する前提の設計であれば、ワインディングカップシャフト(オス側)とピニオンギアブッシング(メス側)の両方に逆螺子を切られていなければ、正面から見て左側に回転(反時計回り)した際にローターを締めこむことが出来ません。
 リトリーブ時に正面から見て右側に回転(時計回り)してもローターが外れることはありません(ラインテンションが掛かった状態であれば、ローターが外れる方向に回転させても、常にローターが閉まる側にラインテンションが掛かるので外れないのです)が、ドラグ作動時にローターが締めこまれるセッティングにしなければ使う事すら出来ません。
 わざわざ極少量生産のリールのために逆螺子のパーツを新規で製作するとはまるで思えませんし。

 ちなみに、二桁の2番台の吊り下げタイプはどうなのかといえば、ローターの固定がそもそもCクランプやボルト止めであるため、このような問題は起こりません。

 ノーマルの150や155との違いは何かと言えば・・・ピックアップピンがダブルであるということ。(150も155もシングルのピックアップピン)

 ABU-MATIC 152のモデルナンバーの謎が、おぼろげに見えてまいりました。
 あくまでも自分の推測にすぎませんが、このリールは販売終了見込みのABU-MATIC 150をどうにかして販売するために、ガルシア社がABU社にベルカバーのみを発注し、ダブルピックアップピンの特別限定モデルとして組み上げたのではないか?と。

この推測を裏付けるかのような資料は、梱包されていた箱にあります。
ABU-MATIC 150用の外装箱の“150”の箇所にわざわざ“152”のステッカーを張り付けているのです。
 これが、特別限定モデルであったことを裏付ける資料その1。

 資料その2は、またどうしてこんなものが手に入ったのか不思議でなりませんが、ABU-MATIC 152の専用ベルカバーを偶然入手しまして、そのパーツナンバーが“9969”という他のABU-MATICのベルカバーのナンバーとは全く違うパーツナンバーであったこと。
 うろ覚えですが、99~というパーツナンバーは特別仕様のものであると以前に聞いたことがあります。

 情報不足で謎だらけのABU-MATIC 152でしたが、とってつけたような外装箱のシール(資料その1)、アフターパーツの特別ナンバー(資料その2)、他のモデルと殆ど違いのない内部構造(証拠その3)というピースが、このリールに関する一つの考察を導き出しました。

 ABU-MATIC 170はダブルピックアップピンですが、他の中型ABU-MATIC(北米で販売されていたのは、145、150、155です)はシングルピックアップピンであることから、廉価版であった150を拡販するためのカスタムモデルであった可能性が非常に高いと思われます。

 ABU-MATIC 150を、ダブルピックアップピン仕様に改造したモデルなので、下一桁の数字を“0”からピックアップピンの数でもある“2”に変更して、ABU-MATIC 152となった。

 二桁ナンバーのABU-MATIC吊り下げ仕様(32、62、72、82)はアンダーロッドのABU 505の登場で製造中止となった経緯からも、1976年にもなって、わざわざ吊り下げ仕様のABU-MATICなんぞをリリースする意味は全くありません。(既にこの頃にはABU 506、507、508は販売されていましたし)

 よって、ABU-MATIC 152はモデルナンバーの法則を無視した特別限定モデルであった、という突飛な考察をブチ上げまして、皆さまへの発表とさせていただきます。

 ただ、ここら辺の確証を得るために参考とした、過去に発見したABU-MATIC 152の画像には、この考察とは相違するものが2か所ありました。
1.ハンドルノブが最終タイプのフラットタイプなので、吊り下げて使用しても違和感ないと思われる
2.ローターの拡大写真には、ダブルピンではなくシングルピンの状態で写っていた

 特にシングルピンの状態がストック状態だったとすると、上記した推測が水泡に帰します。

 真偽不明の謎を解明するために、色々な資料をもって考察や推測が出来るというのも、マニアにとってはたまらない喜びですね。
 スピンキャストリールは奥が深い!

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