ダブル・スイッシャーの有効性を紐解く

 以前、トップ党の記事『ルアー・エクストラクト』でスミスウィック社のデビルズホースを採り上げましたが、ダブル・スイッシャー(ダブル・プロップベイト)タイプのルアーは、他のメーカーでも名品が多く存在し、また現存していることからも、非常に強力なルアーであることがわかります。
 現在のトップウォーター・プラッガー諸氏の間でダブル・スイッシャーは非常に人気が高いですが、20年ほど前までは「ダブル・スイッシャーはただ引きしかできないからつまらない」とされていて、あまり人気がなかったことを思い出しますが、えらい変わりようです。
左からF-100、F-200、F-300
プラドコ傘下になってからAF表記となる

 そのころ人気があったトップウォーター・ルアーは、やはりスティックベイト、ポッパー、ノイジーの3種で、当時生まれ始めた国産トップ系インディーズブランドの製品ラインナップを見ても容易にわかります。
 とはいえ、これら3種だけでは攻め切れないシチュエーションもあり、細々とスイッシャー系統のルアーも生産されて、それなりの需要はあったようですが、ダブル・スイッシャーよりもシングル・スイッシャーの方が明らかに人気がありました。
 様々なアクションを仕掛けた方が、当然楽しいですよね。
 首を振らない(振りづらい)ダブル・スイッシャーよりも、シングル・スイッシャーの方が使い勝手が良かったことも否めません。
 しかし、本質的にシングルスイッシャーとダブルスイッシャーの使い所は違います。
 これは個人的な見解でしかありませんが、シングルスイッシャーは、ややさざ波が立っている状況下でスティックベイト(ペンシルベイト)の性能をアピール面で強化したもの、という位置づけのルアーで、プロペラによる音と散光の効果をスティックベイトに追加したものが殆どでした。(ベースモデルがスティックベイトだったことからも基本コンセプトは同じだったのでしょう)
 例外的に、トーピードのようにピンポイントでのアクションを重視したタイプも存在しますが、現在、トーピード以外にこのタイプは現存していません。
 ダブル・スイッシャーの方はトップウォーター・ルアーの中で最も強力なアピール力を持つルアーであり、活性の低いバスにもスイッチを入れることのできる特殊なルアーであることも事実。
 ダブル・スイッシャーの有効性はどこにあるのか?
 ここをもう一度、整理しておきたいと思います。

(1)プロップによる音の要素
(2)プロップによる散光
(3)プロップによる波動

(1)プロップによる音の要素
 これは前後にセットされたプロペラが水中に空気を巻き込み、その空気が水から剥離する際に発生する音です。
 また、水面に飛散させた水飛沫が着水する際にも、音を発生させます。
 大きなプロペラは当然ながら抵抗が強く、回転させるためにはそれなりのスピードや、停止状態からの突発的な力が必要ですが、それだけ空気を多く巻き込むことが可能なため大きな音が出しやすい。
 小さなプロペラは逆に抵抗が弱く、回転させるためのスピードや、突発的な力はあまり必要ありませんが、空気を巻き込む量が少ないので音は大きくなりづらい。
 これは単にプロペラが大きいか、小さいか、というモノサシだけの話で、プロペラのピッチや設定アングルの要素が更に加わってくると、それだけでは片付けられなくなってきます。
 特に、デビルズホースAF-200の小さなプロペラが奏でるプロップ音は、想像以上に音量と音域が幅広い、他に類を見ない例外的な事例だと思います。

(2)プロップによる散光
 マッディーウォーターでの効果がどの程度なのかはわかりませんが、ダブル・スイッシャー最大の武器はこれではないかと思います。
 プロペラの散光による集魚効果は絶大で、明らかに待ち伏せしているバスの興味を引いているように思います。
 夜釣りの際も、微妙な明かりを反射してその位置を特定させるのか、他のトップウォーター・ルアーよりも確実にミス・バイトが少ないように思います。
 もちろん、この散光による集魚効果ははるか遠くのバスにアピールするものではなく、ダブル・スイッシャーが通過する付近のバスに、強くアピールしているものと思われます。

(3)プロップによる波動
 プロペラは音と散光の効果と同時に、波動による効果ももたらします。
 プロペラによる波動を出すのも、ダブル・スイッシャーの特徴です。
 バスはルアーの動きだけでなく、水面と水中の波動にも強く意識を向けるようで、音の効果、散光効果、そして波動効果の3要素が強くバスにアピールするようです。

 これら3つの要点を紐解いてみると、プロップによる効果がその殆どを占めていることが分かります。
 そもそも、ダブル・スイッシャーには、首振りを得意とするタイプがあまり存在していません。(若干の例外はありますが)
 首振りが得意なダブル・スイッシャーは、比較的喫水が浅く、若干尻下がりのセッティングとなっているのですが、いずれにせよ、ショート・ストロークのテクニカルなトゥイッチングを行うと、前側のプロペラにラインが絡むトラブルが非常に発生しやすくなりますし、また移動距離もそれなりに出てしまうので、ピンポイントを攻略することはあまり得意とは言い難いです。(ヒロ内藤さんとのフロリダ釣行で、特に感じた点です)
 しかしながら、低活性時にフィッシュイーターの捕食音にも似た独特のボイル音を作り出せるのは利点です。
 あまりポーズを取る必要性がないというのも、せっかちな自分には向いているように思います。
 広範囲にウィードベッドが広がっているような、どこにでもバスが潜んでいそうなエリアで、最も効率的にバスを誘えるというのも、ダブル・スイッシャーの特徴でしょう。
 もちろん、スティックベイトやポッパーの高速リトリーブも効果が高いと思いますが、やはり広範囲にバスを探っていくようなシチュエーションこそ、ダブル・スイッシャーの本懐です。
 ロングストローク・ジャークやリトリーブ&ジャーク等で、ウィードベッドの中からバスが水面まで飛び出してくるシーンを何度も経験してしまうと、「やっぱりダブル・スイッシャーは最高だな!」となるわけです。
↑上からF-100、F-300、F-200
シルエットが太いF-200は、F-100よりも大きく見える

 良いことづくめと言うわけにはいかないので、ウィークポイントもここで挙げます。
 ダブル・スイッシャーが苦手とするシチュエーションは確かに存在します。
 特にプロダクティブゾーン(捕食ゾーン)が非常に小さい『釣り辛い』状況でのカバー狙いにおいて、ダブル・スイッシャーは動きすぎる特性が仇となり、バスを誘いきれない事がままあります。
 ピンポイントで誘いをかける際は、ダブル・スイッシャーよりもシングル・スイッシャーの方が適任です。
 やはり適材適所、状況によってルアーを使い分ける必要性が出てくるわけです。

 タックルの選択はアングラー側の自由なので、お好きなダブルスイッシャーを選べばよいと思いますが、個人的にはやはりスミスウィック社のデビルズホースAF-200を挙げておきます。
↑左はリグを逆に付け替えたF-200
首振りが得意なダブルスイッシャーに早変わり
サイズとボリューム、そして重量のバランス的に最良で、音質と音域の幅が広いために、様々な状況下で使うことが出来ます。
 「なんでスミスウィック社のルアーはほとんど同じ色のやつを使うのか?」とよく聞かれるのですが、たまたまカラーコード12番の「チンカピンブリーム」が、スミスウィックらしいカラーで好きなだけです。
 他にも色々なカラーのAF-200を持ってますし、AF-100もタックルボックスには入れているのですが、いつも同じデビルズホースを結んでしまいます。
 自分のフェイバリットなルアーを作るというのも楽しみの一つです。
 同じルアーで何匹も釣っていれば自信に繋がりますし、その利点と欠点を掌握していればこそ、目の前の状況でルアーを結び換える際の指標にもなります。
 皆さんも是非、最も信頼のおけるダブル・スイッシャーを見つけ出してください。
 きっといつまでも心に残る、素晴らしいバスとの出会いを作ってくれるはずです。 

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