ポップR 秘匿され続けてきた伝説のポッパー(2023年8月24日更新)

トップトウの連載、『ルアー・エクストラクト』は毎回ご好評をいただいており、ヒロ内藤さんの過去記事や談話などを取りまとめさせて頂いている立場の者として、とても嬉しく思います。
 皆、もっと色々とヒロさんに聞きたかったでしょ?
 自分がその『もっと知りたい輩』の最右翼ということもあり、テーマとなるルアーに関するヒロさんの記事をひっくり返しては、更に独自に調べ上げて再構成、そしてわからないところがあればヒロさんに直接訊いてしまうという夢のような企画です。
 正直いえば、読者諸兄のためというよりも、自分自身の探求心の方が先行している気がしてなりませんが、その恩恵は確実に記事となって反映されるので何卒ご容赦ください。
 そんなこんなで、ヘドン・タイガー、スミスウィック・デビルズホース、レーベル・ミノーF10ときて、次はコットンコーデルかボーマーか?と思わせつつ、パリコレ工藤編集長から要望されたお題が、レーベル社のポップR。
 「あんな有名なルアーだったら楽勝で記事にできるぜ!」と思ったのが大間違い、過去最大級に苦労させられるとは、この時は微塵も思っていませんでした。

 はい、ここで皆さんに質問。
<質問1>
 ポップRはレーベル社の発売した何番目のポッパーで、何年に発売されたルアーでしょうか?

<回答1>
 多分、全員答えられないんじゃないかと思います。
 ポップRはレーベル社で発売されたポッパータイプのルアーの中では、5番目に発売されたルアーです。

 1番目は、デッドリー・レーベル・ポッパー(後に「ポッパー」の名称のみ)
 2番目は、スキッパー
 3番目は、ウィンドチーター(ソルト専用のシンキング)
 4番目は、ボーンヘッド・ポッパー(1973年発売)
 5番目が、ポップR(1975年発表?1976年発売)
ポップRはレーベル社のポッパーでは5番目の製品

 それでは2番目の質問。
<質問2>
 最初に発売されたポップRの型番は?そして何種類?

 これは知っている方は知ってますね。
<回答2>
 P60とP70の2種類。

 最後の質問。
<質問3>
 伝説のルアーは初期モデル(1stモデル)のP60とP70のどっち?

 「え、P60とP70の両方でしょ?」と、ポップRに詳しい方は思われるでしょう。
 残念ながら不正解です。
<回答3>
 1stモデルのP60が伝説のルアーである。

 調べ続けている途中で「????」となったのが、1979年のレーベル社のカタログからP60がきれいさっぱり消えていたことでした。
 さらに詳しく調べていくと驚愕の事実が!
 なんとP60は1978年に製造中止となっていたのです。
 市場に出てたったの3年で廃番ですよ。
 1978年以降も、あるショップ向けの特別オーダー(一部のバスプロたちによるオーダー)があったことは公式な情報として開示されているものの、1978年の時点で既に入手困難な状態であったようです。(そもそもP60は、サイズと重量の問題でP70よりも売れていなかったらしい)
 数多のルアーコレクターの間でも1stモデルのP60を持っている方は殆どいらっしゃらないと思います。
 なぜなら、市場に流通したP60を一部の有名なバスプロたち(リック・クラン、ボビー・マーレイ、ビリー・マーレイ、ゼル・ローランド、トミー・マーチンら)が「殆どを買い占めた」からです。
 他のバスプロたちに使われないよう、必要以上にポップRを買い占めたのだそうです。
 長きに渡り秘匿され続け、マネーベイトとしてトッププロの極一部の者だけが、その釣果の恩恵を受けてきたのでした。
 この逸話からも、どれだけ爆発的な釣果を叩き出せるルアーだったのか、想像するのは容易いですね。
↑デッドストックの1stモデルP60
ナチュラライズド・フロッグ
(協力:ジャンクフード椎名さん)

 こちらで手に入っているカタログ上のデータでは、1975年の発表当初のカラーパターンは「スタンダード」、「スポット」、「コード#4ボーン」と書かれています。
 スタンダードカラー9色(01シルバー/ブラックバック、02ゴールド/ブラックバック、03シルバー/ブルーバック、05シルバー/パープルバック、06シルバー/イエローバック、10グリーンバック/イエローベリー、CXシルバー/チャートリュースバック、OXゴールド/オレンジバック、RBWレインボー)の全色が存在するのかは現時点で確認することが出来ませんでしたが、スポットカラー3色(21シルバー/ブラックバック・スポット、23シルバー/ブルーバック・スポット、26シルバー/イエローバック・スポット)の存在は確認できました。
 1976年カタログで確認したカラーコード「F」では、01シルバー/ブラックバック、03シルバー/ブルーバック、06シルバー/イエローバックの3種類。
 1977年カタログで確認したカラーコード「F」では、17ベビーバス、18ケンタッキーバス、20ブラック/ホワイトストライプ、22ホワイト/ブラックストライプの4種類。
 1978年カタログで確認したカラーコードは「F」では、00ボーン、76ナチュラライズド・バス、79ナチュラライズド・フロッグの3種類。
 ポップR(P60)の初期モデルのカラーは、以上の9色+3色+1色+4色+3色の、合計20色であることが判明しました。
 特に、クロスエッジングのある17ベビーバス、18ケンタッキーバスが存在していたことは驚きです。

 P60の1stモデルの判別方法は非常に厄介です。
 なにせモールドが2種類存在するのですから!
 76ナチュラライズド・バス、79ナチュラライズド・フロッグは、クロスエッジングのないツルツルの表面で、しかもレア・カラーなのですぐに分かりますが、問題はクロスエッジングを施されたモデルの判別方法です。
 スタンダードカラーのうち、05シルバー/パープルバック、06シルバー/イエローバック、CXシルバー/チャートリュースバック、OXゴールド/オレンジバック、RBWレインボーの5色と、スポットカラー3色は1stモデルのポップRにのみ存在するカラーなので判別は容易ですが、残りのカラーについては、どうやって判別するのか?
 01シルバー/ブラックバック、02ゴールド/ブラックバック、03シルバー・ブルーバック、10グリーンバック/イエローベリー(レギュラーカラーではないが、3rdモデルにその存在を確認)、00ボーンは、現行のポップRにも採用されているカラーです。

 ここでキーとなるのが、2代目P60(2ndモデル)登場に関する逸話です。
 約10年近くの間、トーナメントでのマネーベイトとして秘匿され続けてきたポップR(P60)でしたが、遂に秘密が公になる日がやってきます。
 切っ掛けは、1987年1月号のバスマスターマガジンの記事に掲載されたことでした。
 1986年6月のB.A.S.S.スーパーインビテーショナル戦で、バスプロのゼル・ローランド氏がポップRでトーナメントを制した際、ポップR(P60)が優勝の鍵となったことが記事となり、全米のバスアングラーの間にその存在が知れ渡ったことで、レーベル社に問い合わせが殺到することととなり、P60は1987年に劇的な復活を遂げることとなります。
 満を持して復活したP60(通称2ndモデル)でしたが、1stモデルとはモールドが異なっており、肉厚のカップ部分から発せられる音の質とスプラッシュの切れが悪く、あまり評判が良くありませんでした。
 ゼル・ローランド氏はこの2ndモデルを削り込み、カップ部を鋭利にするチューンを施していることも話題となり、2ndモデルの大半が一般のアングラーによって魔改造を施されるという事態に発展したことも、今となっては懐かしい話です。

 1987年に復活したP60(2ndモデル)は、カップのエッジ部分に肉厚の縁があるため誰が見てもすぐに判別が可能です。
 3rdモデルは1990年代に入ってからですが、1stモデルに酷似した造形で、1stモデルとの外観上の差異は本当に些細な所しかありません。

 1stモデルの最も確実な判別方法は、正面から見てボディー左側末端の方にあるREBELのエンボス加工されたロゴ形状でしょう。
 当然ながら、『2ndモデルの厚口カップではない』という前提で、非常に凹凸のハッキリとした寸詰まりの大文字で「REBEL」とあります。(2ndモデルと1stモデルのエンボスロゴ形状はほぼ同じです)
 3rdモデル以降はこの「REBEL」のエンボス加工の凹凸が小さく、細字で刻まれています。
 更に、テール側フックのバックテイルが比較的長く、ティンセルが付属していません。
 最後に、フックがブロンズのカーブド・ポイントであることです。
 3rdモデル以降は、ニッケルメッキされたラウンドフックかエクスキャリバーフックが採用されており、ブロンズのカーブド・ポイントフックが採用されていないためです。

 ここまで1stモデルを持ち上げておいて何ですが、3rdモデル以降の現行のポップRは、忠実に1stモデルのカップ形状を再現していることもあり、『1stモデルとの性能差は殆どない』というのが本当のところです。
 すなわち、3rdモデルは1stモデルと同様に、非常によく釣れるルアーである、ということです。
↑左が1stモデル、右が現行モデル
浮き角度、カップ形状も殆ど一緒
↑1stモデルのナチュラライズド・フロッグ
REBELのエンボス文字がハッキリしている

 1985年にニューモデルとしてP50が登場。(P62 DROP POP-Rも登場するも後に廃番)
 P70は1994年まで発売されていました。(2010年に限定復刻)
 P70と入れ替わるように1995年にP65が登場。
 以降はP50、P60、P65の3種ラインナップとなり、現在に至ります。
 P50は反則的に釣れるマイクロポッパーとして一部のアングラーには絶大な人気があり、P60も当然ながら非常によく釣れるルアーで、ベテランアングラーであれば必ず持っているルアーだと思います。
 P65は捕食音を模した大きな音を出しやすいポッパーで、重量もそれなりにあるので使いやすい。
 P70は現行3種と比較すると圧倒されるくらいに大柄ですが、こちらもP65同様、大きな捕食音を出せるポッパーとしてベテランアングラーにはとても人気があります。

 今回、『ルアー・エクストラクト』の記事を書くことで、ここまでポップRを調べ上げたのはとても良い機会でした。
 また、未だにオフィシャルで喧伝されていない、ポップRトリビアとして、これはP60のみ適用されるのですが、
・クロスエッジングモデルは45度以上の角度の立ち浮き
・クロスエッジングのないモデルは45度未満の浅い角度で浮く
 という秘密があります。
↑左がクロスエッジングモデル、右が凹凸無しモデル
浮き角度は同じボーンカラーでもこんなに違う
同じ型番のポップRですが、まるで性格が異なっているため、2種類それぞれを持っていると何かと便利です。
 P50とP65にもクロスエッジング無しのモデルが存在しますが、こちらは45度以上の角度の立ち浮きです。(P50は若干浅い角度になってましたが)
 1stモデルのP60とP70は、クロスエッジングの有無に拘わらず、45度以上の角度の立ち浮きであることを確認しています。
 浮き姿勢の違いについて考察してみると、浮き角度を浅くすることでダイブしづらく、同時に左右の動きを取り入れたモデルとして、プラドコ社のオートグラフシリーズにゼル・ローランド氏のシグネーチャーモデルとなる『プロ・ポップR』を新たに誕生させたことが、結果的に2種類の浮き角度をもつポップRが存在するようになった理由です。
 この浮き姿勢の違いは、当時のバスプロや所属テスターの意見によるものだそうで、これ以降、製品ラインナップにP61ナンバーが追加され、その後、『クラッシック・ポップR』と呼ばれたり、『ポップRプラス』と呼ばれたりして現在も存続しています。
 P61はクロスエッジングのないモデルとしたことで、クロスエッジングなしは45度未満に浮くタイプとして判別できるようになった訳です。
 唯一の例外が「ミスティック・ポップR」で、クロスエッジングのモールドをベースにして厚塗りの塗膜(オーロラ・コーティング)が施されたもので、P60サイズですが一回り太くなっており、後付けのドールアイや、エクスキャリバーフックが採用されています。
 浮き姿勢はきっちり45度で、これはクロスエッジングモデルともクロスエッジング無しモデルとも異なる性格を持たされています。
 流通量の少ないレアモデルには、こういう秘密があるというのも非常に面白いですね。
↑ミスティック・ポップRの浮き姿勢の違い(個体差)
左側の方はラインアイにリングが付属している
微妙なウェイトの差で浮き角度が変わってしまう

 更に、『ルアー・エクストラクト』に書けなかった情報としては、1stモデルP60→2ndモデルP60改造→プロモデルP61→エクスキャリバー・ゼルポップXZ2→ブーヤー・ボスポップBYBP2へと進化していることを付け加えておきます。
 ゼル・ローランド氏が1stモデルP60の性能に惚れ込み、2ndモデルP60を改造して1stモデルP60の性能に近づけた事。
 3rdモデル以降はノーマルで充分としながらも、結果的にオリジナルのポッパーを開発してしまったのですから、どれだけ1stモデルP60が優れた性能を持っていたのかは容易に推察できます。
 ちなみに、ゆったりとしたポッピングアクションで使うだけでは、ポップRの特性を充分に生かせておらず、超高速トゥイッチング、即ち『ファースト・ステディー・ポッパー』をテクニックとして活用して、初めてその真価を発揮するそうです。
 ただし、そのためにはポップRに専用のチューニングを行う必要があります。
 チューニングは至って簡単なもので、木綿の糸をラインアイの中心部分に巻き付けて結びコブを作り、それを瞬間接着剤で固定するというもの。
 固定した結びコブの下側にラインを直結(ここが重要です)することで、ポップRは潜りづらくなり、ファーストステディー・ポッパーのテクニックが可能となるのです。(ちなみに上側に結ぶと、潜りやすくなります)
 チューニングせずにファーストステディー・ポッパーのテクニックを用いるのであれば、現行のブーヤー社のボスポップBYBP2を使うのが良いようです。
 ボスポップはちょうど45度の角度で浮く姿勢を取り、ポップRの浮き角度とも異なっていますが、1stモデルのポップRを進化させたルアーです。
 更に、リップをつけた新しいポッパーであるブーヤー社のプランクは、ほぼ水平に近い浮き姿勢を取り、シャロークランクとしても使えるようにしています。
 外形はほぼボスポップにリップをつけただけに見えますが、性格は異なっています。
 他のアングラーが釣り漏らしたバスを次々とストライクさせていくのはとても面白いです。
 皆さんもポップRの魅力を再確認していただければと思います。


※トップトウ連載記事(The Lure Extract Vol.4 REBEL POP-R)の訂正※

 ヒロさんからの校正のタイミングが最終段階で合わず、間違った翻訳がそのまま記事になっています。
誤:゛MOST INFAMOUS LURE”(最も悪名高いルアー)
正:゛MOST INFAMOUS LURE”(最も知名度の低いルアー)
 だそうです。
 これ、日本人による翻訳では必ず間違っちゃうんですね。
『INFAMOUS=悪名高い』
 以外には訳せませんから
『知名度の低い』というのは、『その名が表に出てこなかった』という意味であり、ポップRは、長きに渡って一部のトッププロ達が隠し通してきた秘密のルアーの一つだったのですね

※ 2023年8月24日 1stモデルの全20色のカラーを確認

 長きに渡り調べておりました、REBEL社の1977年カタログで掲載されていたPOP-RのカラーコードFのラインナップを確認し、不明だったカラーコードが判明しました。
 やはりクロスエッジングモデルの『ベビーバス(後のOLE’ BASS)』カラーは存在し、更に『ケンタッキーバス』カラーという初見のないカラーが存在したことは驚きです。
 そして、ホワイトコーチ、ブラックコーチと呼称していたカラー(ブラック/ホワイトストライプ、ホワイト/ブラックストライプ)は1977年モデルで存在しており、これで全てのカラーパターンを把握しました。

初回掲載:2019年6月25日
最新更新:2023年8月24日



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