カバー・ポッパー

 前回のルアー・エクストラクトの記事を書いてから、再びポップRのマイブームが再燃しているのですが、P60に焦点を当てた前回の内容とは別に、それ以外のサイズについても調べているうちに、出てくるわ出てくるわ、色々なネタが。
 しばらく自分の中のポップRブームは去りそうもありません。
1980年代初頭の古いタイプのP70
ブロンズのカーブド・ポイント・フックに
長いバックテイルが特徴的

 1976年に最初に登場したP60とP70の2つのサイズのポップRでしたが、その本当の実力はさておき、小型のP60は不人気で商業的に失敗し、1978年には製品ラインナップから外されたのは紛れもない事実。
 当時のタックルでは扱い辛いサイズだったため、スピニングタックルなら投げることは出来たでしょうが、ロッドアクションはつけづらいし、リトリーブ・スピードが速すぎるために、扱いには困るルアーだったのでしょう。
 しかし、P70の方はP60とは打って変わって、発売当初から大人気だったようです。
 サイズと重量がベイトタックルで扱うのに相応しかったこと、そしてその潜在能力もP60と同様、他に類を見ない傑出したものであったためです。

 2010年に約16年振りに限定復刻されたP70でしたが、オリジナルモデルとは内部構造が異なり、遊動式ウェイトのお陰で、騒々しいラトル音を奏でるようになったものの、思ったようにアクションさせられないという厄介な問題がある様子。(持っていないので使った人の意見しか聞いておりませんが・・・)
 テネシー州東部のバスプロ達の間では、ポップR(P70)を使った「フリッピング・トップウォーター・ポッパー」というローカル・テクニックがあり、バスプロのオットー・デフォー氏が「初期モデルのP70でないと上手くいかない」と評しています。(復刻モデルは若干軽いのと、思った通りには動かないことを理由に挙げています)
↑www.finsntales.comの画像より
オットー・デフォー氏のカバー・ポッパー用タックル
オールドのポップR(P70)が結ばれています

 P70は他のポッパーと何が違うのか?
 数多のポッパータイプのルアーが存在する中で、P70最大の特徴は、ピンポイントでバスを誘うアクションの多彩さに尽きます。
 そこら中にバスが潜んでいて、プロダクティブゾーン(ルアーに興味を持つ距離)が長い場合には、明らかに他のルアーの方が優れています。(例えば、バズベイトやダブルスイッシャーなど)
 P70は広範囲を探るルアーとしては少々使い辛いタイプのルアーです。
 連続した高速引きには全く適さない重い引き心地といい、ポップ音を出すよりも大きなチャガー音を出す方が得意な、深いカップ形状もしています。
 長いストロークを引くのには、それなりの腕力も必要です。
 実際に、4種類(P50、P60、P65、P70)が存在するポップRの中で、最も疲れるのはP70です。
 P65も疲れる類ですが、P70ほどではありません。

 ポップRは、ベイトフィッシュの逃走する音を模したポッパータイプ(P50、P60)と、フィッシュイーターの捕食音を模したチャガータイプ(P65、P70)に分けられますが、それぞれが使い方によってポッパータイプの音を出したり、チャガータイプの音を出せるという、他に類を見ない汎用性を持つルアーです。
 普通は、ポッパータイプであれ、チャガータイプであれ、広範囲を探ることしかできないルアーが殆どです。
 これは単に浮き姿勢の問題だと思います。
 ポッパータイプの大半は、静止時に45度以浅の角度で浮きますし、チャガータイプに至ってはほぼ水平に浮きます。
 ポッパータイプもその殆どがスプラッシュ(水飛沫)に重きを置いているようですし、チャガーの大きな捕食音も、それなりのストロークがないと出せませんから、必然的に移動距離が長くなってしまうのです。
 垂直浮きに近い形をとる、例えばスミスウィックのウッドチャグや、レーベルのスーパーポップRは、ピンポイントでルアーを大きく動かさずに誘いを掛けられる反面、スピーディーな連続ポッピング・リトリーブには向きません。
 これが得意なのがP60なのですが、これは単純にサイズとカップの大きさが合致しているからでしょう。
 その証拠にサイズがさらに小さいP50は水面から飛び出して滑り出してしまうし、サイズが大きいP65は、強烈な抵抗が邪魔をして連続ポッピングをし続けられません。
 P70に至ってはいわずもがな、ですね。(できないわけではないが、やりたくはないでしょう)
 P60がどれだけ秀逸であるのかが分かる所でもありますね。(ちなみにファーストステディーポッパー用のラインアイのチューニングをやらないで、そのままラインを結ぶとP60は水面直下を潜ってしまい、結構疲れます)

 さて、本題であるカバー・ポッパーのテクニックに移りましょう。
 よくフィールドで目にする、オーバーハングや枯れ立ち、ブッシュや葦等のグラスカバーは何処にでもありますが、ここに潜んでいると思しきバスを誘い出すのに有効な方法として、トップウォータープラグを用いたプラッギングが挙げられます。(ワームやジグを落とすのもアリですが、面白みに欠けます)
 トップウォーターベイト、例えばスティックベイト、スイッシャー、ポッパー、チャガー、ダーター、ノイジー・・・何を選択するのかはアングラーの自由ですが、警戒心が上がっていて釣り辛い状況となると、必然的にプロダクティブゾーンが小さくなります。
 こうなると、広範囲を探るような使い方が主体のトップウォータープラグでは攻めあぐねることとなります。
 ウォーキング・ザ・ドッグを用いるスティックベイト、ダブルスイッシャー、チャガーやダーターは選択肢から外れますね。
 テーブルターンで攻められるスティックベイト、例えばヘドン社の210サーフェイス、コットンコーデル社のペンシルポッパーは有りですが、それでも移動距離がやや大きい。
 シングルスイッシャーであればヘドン社のトーピードはピンスポットを執拗に探ることが出来るので良いでしょう。(トーピードはハイプレッシャーな状況下で非常に強い)
 ノイジーも、ヘドン社のクレイジークローラーを一点でアクションさせ続けたりできれば有りですが、アクションが単調です。
 スプラッシュ主体のポッパーは移動距離がありすぎますし、チャガーも同様です。
 しかし、垂直に近い浮き方をするポッパーは移動距離が短いため、このような状況下では最適です。
 ここからがカバー・ポッパーのテクニックです。
 やや近距離気味のキャスティングで正確にカバーギリギリにルアーを撃ち込んでいく場合、飛行姿勢が安定していて、それなりに重量があり、さらにアクション時に移動距離が小さく済み、多彩なアクションが可能なポッパーとなると、選択肢が非常に少なくなります。
 これに最適なポッパーこそがP70なのです。
 後にも先にも、P70を凌駕したポッパーは出てきていません。
 ベジテーション廻りでは、どうしてもトリプルフックに引っ掛かってしまいそうですが、ダブルフックに換装すると、フックシャンクが長くなって逆に根掛りしやすくなったり、フッキング率が低下したり、重量バランスが変わってしまってアクションが悪くなりがちです。
 多少の根掛りは、近距離であることから上手く外すようにしつつ、ノーマルフックのセッティングで使用するか、場合によっては真下にくる一本をニッパーでカットし、簡易的なダブルフック化すると良いです。(一本カットの場合、重量的な変化が少ないのかアクションに影響がほとんどない)
 キャスティングがそもそもフリッピング、もしくはピッチングになるので、ロッドは6ftのファーストアクションで、グリップエンドが邪魔にならないロッドが使いやすいようです。
 使用するラインはナイロンライン17lbで、ルアーとの結束はループノットが望ましいと、バスプロのオットー・デフォー氏は推奨しています。

 厄介なことに、このP70は復刻前のオリジナルを用いなければならなかったのですが、近年になって、オットー・デフォー氏が設計に関わった、ラパラ・ストーム社のアラシ・カバーポップや、シックスセンス社のスプラッシュバックが、P70のコンセプトを受け継いだカバー・ポッパーとして新たに登場しています。(P70のオリジナルモデルは入手難ですから、必要に駆られていたのでしょうね)
↑www.finsntales.comの画像より
P70を用いたカバー・ポッパー・テクニックの
アクションを連続して並べてみました

 単にポップ音やチャガー音を出すだけでなく、左右に首を振り、ダイブして大きくロールするなどの多彩なアクションをこなすことが出来るのが、P70の最大の特徴でしょう。
 画像を見ると、それらの多彩なアクションをこなしているのが良く分かります。

 こういったそれぞれのルアーに組み込まれたアクションを駆使して、バスを誘い出すことが出来るようになると、ルアーフィッシングは益々楽しくなりますね。
 自分もP70を使ったカバー・ポッパーのテクニックを実践して、その効果を確かめてみたいと思います。

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