訣別と新生と ダイワ ジリオンTW 1516L/ジリオンSV TW 1016SV-L

 最初のベイトキャスティングリールを手に入れたのは、確か1997年のことでした。
 元々トラウトのルアーアングラーであったし、小学生の頃から使ってきた『スプリンターST-900』から、大学生時代にAbuGarcia社の『1044 SYNCRO MATCH』に切り替え、スピニングリールは営業職で担当していたマミヤOPの『AUSTER SS-700』と『APEX-700』に切り替えましたが、ベイトキャスティングリールの方は25歳を過ぎても使う理由が特になかったのです。
 トラウトのオフシーズンに始めたバスフィッシングで、スピナーベイトを使う必要性から、ベイトキャスティングリールを購入することとなりました。
 最初に手にしたベイトキャスティングリールは、AbuGarcia社の『AMBASSADEUR UC4601C D2D2』。
 このリールに嫌というほどのバックラッシュの仕組みと、その解き方、分解整備の方法を学び、ベイトキャスティングリールがようやく真面に使えるようになりました。
 2000年にマミヤOPが釣具事業から撤退したことで、AbuGarcia社製品の取り扱いがピュアフィッシングジャパン(PFJ)に変わりましたが、2001年まではマミヤOPのバーツセンターが部品を供給してくれていました。
 AbuGarcia社製品の取り扱いを引き継いだはずのPFJでしたが、蓋を開ければ「For Life」を掲げたAbuGarcia社の企業ポリシーはどこへやら、発売して5年も経たない1997年モデルのパーツすら供給不能という、驚くほど製品サポート体制が杜撰な会社で、ひどく失望しました。(マミヤOPから予備パーツを一切引き継がなかったからでしょう)
 この事件が切っ掛けとなり、それまで溺愛してきたAbuGarcia社製品と『UC4601C D2 D2』を使うことを止めてしまいました。
 壊れたら直せないのですから、使わなくなるのは当然でしょう。
 その後、使ってみたかったオールドリールや、シマノ製のリールを何台か購入して使ってみたものの、気に入るようなリールを見つけることが出来ず、ほとほと困り果てていましたが、2006年に五十鈴工業製リールと出会い、『BC701SS-PROTO』、2007年に『BC701SSS』、続けて『BC601SSS』、2009年に『BC421SSS』を手に入れ、ロープロモデルの『BC731SSS』、『521X CHIMERA』、『BC431SSS』を次々と使い続けることとなります。
 しかし、根本的なフィッシングスタイルの相違(近距離をハイスピードで多投し、常に強い引き抵抗のルアーを巻き続けるもの)から、五十鈴工業製リールにはどうしても修正することの出来ない、使い勝手の悪い部分が存在していました。
 自分に必要だったのは、より強靭で汎用性の高いリールであったにも拘らず、細いラインしか使えない小型モデルや右ハンドルのモデルばかりが製造され、登場を強く望んでいた左ハンドルのヘビーデューティーモデルは一向に登場しません。
 2020年6月26日、五十鈴工業の事業譲渡発表により、10年以上待ち続けてきた左ハンドルのヘビーデューティーモデル(BC711HD/BC611HD)が登場する可能性が無くなり、使い続けていく理由も無くなってしまいました。
 特に思い入れのあるBC701SS-PROTOを除き、所有していた全ての五十鈴工業製リールを手放したことは、リール専業メーカーであった五十鈴工業との『訣別』を意味していました。

 さて、約10年ほど前でしょうか?
 ダイワ精工でリールの開発企画に関わっているという方が、「どうすればベテランのアングラーが自社のリールを買ってくれるのか?」というヒントを聞きに、わざわざ来店してくれたことがありました。
 以前ブログには書きましたが、自分からは下記の内容をアドバイスしました。
「リールの筐体は樹脂ではなく、メタルで作ること」
「すぐにモデルチェンジするのではなく、新型が出ても旧型モデルが輝きを失わないこと」
「自社の製品シリーズを大切にすること(製品のブランディングを大切にする)」
「ユーザーによるメンテナンスを推奨すること(その頃のダイワ精工はメーカーによるメンテナンスに一本化しようとしていた)」
「ユーザーのカスタムを容認すること(出来れば自社カスタムパーツを充実させるべき)」
「20年後に使っていても、全く恥ずかしくないリールを作ること」
 上記のような内容を進言して約10年が経過した現在、ダイワ精工のリールは、まるでこの時の自分のアドバイスを具現化したかのようなラインナップとなっています。
 失礼ながら、このような理想的な製品を作られていることに全く気付いておりませんでした。
 素直に謝ります。
 現在のダイワ精工製リールには、自分が必要とするもの(より強靭で汎用性の高い性能)が備わっています。
 2020年7月。
 これから自分が愛用していくのに相応しい、2台のリールを厳選しました。
 まず、最初の1台目は、2020年に型落ちとなってしまった『ジリオンTW 1516L』。

 5.5:1のギア比をもつ、シリーズ中最もギア比の低いモデルです。
 ジリオンTWシリーズは、9.1:1のエクストラ・ハイギア(XXH)モデルばかりが注目を集めましたが、自分に必要なのは『強靭な筐体剛性』と強い引き抵抗をものともしない『強力な巻き取り力』です。
 ジリオンTWシリーズは既に発売から5年以上経過していますが、ブラッシュアップされたジリオンTW HDや、HLC(ハイパーロングキャスト)等の派生モデルを生み出してきた名機中の名機です。
 そして2台目は、その『ジリオンTW 1516L』のSVダウンサイズモデルである『ジリオンSV TW 1016SV-L』 。

 『ジリオンTW 1516L』とほぼ同様の選択理由(『強靭な筐体剛性』と『強力な巻取り力』)になりますが、簡単な使い分けは、強い巻き抵抗のあるヘビー級のルアー、例えば1/2oz以上のスピナーベイトやディープクランクベイトには『ジリオン TW 1516 L』を、トップウォータープラグ全般や、ミノープラグ等のサーフェイスプラグには『ジリオン SV TW 1016SV-L』をと考えていますが、そのどちらにも対応が出来るのが両方のリールの利点です。
 これまで所有してきたどのベイトキャスティングリールよりも軽量(1516Lは215g、1016SV-Lは195g)でありながらも、高強度アルミ製のメタルボディーであることに安心感を覚えます。
 これら2台のリールが、新たなる自分の愛機となります。


 これから長い付き合いになると思います。
 もしかすると自分が死ぬまで、この2台のリールを使い続けるかもしれませんね。
 その活躍の物語はまたの機会に。

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