異常な価格高騰に見合う価値はあるか?

 今回は戯言です。
 最近、特に釣具の転売が目も当てられない酷い状態になっていると感じます。
 その機能に対してではなく、見た目のイメージ先行のみで、法外な価格高騰が続いていることに、その渦中にいる欲しがるユーザーが全く気付いていないこと。
 同じ価格を出せるのならば、圧倒的に性能が突出した最新鋭の大手メーカー製ベイトフィネス専用リールが3台以上買えるのですが・・・。


 何でしょうね・・・自分たちがそれらを当たり前に使ってきたからこそ、ただでさえ材料費高騰で販売価格が高騰したというのに、その3倍を超えるような価格で当たり前のように転売されている現状は、異常と言う以外に表現のしようがありません。
 ハッキリ言いますが、その法外な転売価格で取引をされている小型の左ハンドルリールは、10数年前に4万円程の通常価格で販売された以上の価値などありません。
 それは現在の転売ブーム以前から存在していた北欧由来メーカーの1601C、2501C、2601Cについても同様です。
 上記のリールは、PRO MAX1600C/3600Cを祖にするマシンカットフレームの上位機種(SM1600C/3600C、SX1600C/1601C、SX3600C/3601C)ではなく、1975年に企画された小型廉価モデルであった2500Cがベースであり、4600系統のような上位機種ではないという事実。
 実際に使えばわかりますが、このリールを通常使用していれば、いずれはピニオンギアが摩耗して壊れるような稚拙な設計で造られています。
 グリスをたっぷりつけても防ぐことが出来ない、根本的な強度と耐久性が不足していることが大きな問題です。
 エビスフィッシングからオリムピック釣具に日本総代理店が引き継がれた後、小型軽量のLiteシリーズが登場したにもかかわらず、人気があるために何度も復刻された2500Cでしたが、強度不足と耐久性不足の問題は改善されることなく、そのまま引き継がれました。
 1993年に初めてマシンカットフレームのPRO MAX 1600C/3600Cが登場したことで、この廉価版リールはその役目を終えるはずでしたが、人気があるために更に復刻される始末。
 何が問題なのかと言えば、このリールはピラードフレームの剛性と巻取りトルクが非常に低いだけでなく、ハンドル一回転分のラインの巻取り量が極端に少ないことです。
 お世辞にも、使い勝手の良いリールとは言えません。
 実は、PRO MAX 1600C/3600Cは、この点がすべてクリアになっているので、非常に優秀なリールだったのですが、自重が重すぎて敬遠されました。
 後継機のSM1600C/3600Cになっても重量に関しては軽減されることなく、結果的に1999年にSX1600C/1601C、3600C/3601Cが登場するまで、軽量化されることはありませんでしたが、5万円に迫る高額な価格が災いし、簡単に手に入れることの出来るリールではありませんでした。
 当時はバスバブルの最中でもあったので、低価格で乱発された1500C、1600C、1601C、2500C、2600C、2601Cは、多くのユーザーが手にしたリールとなりましたが、やはり使い勝手の悪さからすぐに買い替えられてしまう運命にありました。(2000年代半ばに発売された2500C/2501Cは組みつけ精度がマミヤOP代理店時代よりも明らかに劣っていたため酷評されましたが、今では高値で取引されているようです)
 それが手に入らなくなって暫くすると、何故か不可解な高値で中古品が取り引きされるようになったまま、現在の異常な価格高騰の状況となります。
 S社のカルカッタ50サイズの方がよほど価値があると思いますが、ピラードフレームのアンバサダーのようなクラッシックなスタイルの方が、玄人っぽいと思われてしまったのも大きな理由でしょう。

 スピニングリールの古いカーディナルが未だに珍重されている最大の理由は、2000年以降は何故か『玄人っぽさや、長くやり込んでいるベテランのイメージを持たれたい』という、キャリアの浅いアングラー特有の心情効果が強くあったように思えます。
 そもそも、私が成人した頃に人気のあったスピニングリールは、ダイワのトーナメントやシマノのステラのようなハイエンドモデルであって、アブのスピニングリールは旧態依然とした滅茶苦茶重いSMシリーズしかありませんでした。
 当時(1990年代)は古い型落ちリールを使うことはとても恥ずかしいことのように感じるのが普通でしたし、最新鋭のハイエンドモデルを手にする方がベテランぽく思われたものでした。
 実際に渓流ではカーディナル33や3よりも、1000番台のステラや、登場したてのシルバークリークの方が使い勝手は良かったですし、より釣果も得られました。
 「ウォームギア云々」やら「ナロースプール云々」やら、それらしいことを言う輩が大勢いますが、そんなものは詭弁です。
 最新鋭のフェイスギアや小型軽量化されたコンパクトボディー、歪みやがたつきのない高精度なリールの方がルアーの挙動をつかみやすいのは誰の目にも明らかです。
 ギア比も以前と違ってローギアモデルも選べるようになり、まったくもって不可解なビジュアル重視の製品選びが横行しているのが非常に嘆かわしく思います。
 逆にキャリアを重ねたベテランからは、見栄っ張りなビギナーのステレオタイプそのものだと思われますから、私だったら使い勝手の良い別のリールを選びますね。
 2000年頃のシルバークリークなんて、メチャクチャ玄人っぽいのでカーディナルを使っているより数段格好いいと思うんですが、そう思わないところが想像力が欠けているというかなんというか・・・実際に当時やり込んでなかったことがすぐにバレちゃうんですよ。

 バスフィッシングでもトップウォーターの世界では未だ5500Cや5000Cが幅を利かせているのも、同じ理由でしょう。
 バスフィッシング黎明期の憧れのアングラーが使っていた道具というのもあるでしょうが、1970年代に生まれていないアングラーが選ぶリールとしては不相応な気がします。
 逆に、メタニウムやアンタレスを使っている方が相当にやり込んでいる印象を受けますが、ほとんど見かけることはありません。
 50歳代の我々にとって4600Cは憧れのリールだったわけですが、私のファーストリールである1997年モデルのUC4601C D2D2ですら、当時から古臭いスタイルのリールでしたし、今となっては25年前の立派なオールドリールなわけですから、それよりはるかに古いリールを有難がるのはどうかしていると言わざるを得ません。(当時の設計製造技術の最高峰であっても、現在の設計製造技術と比べれば明らかに劣っています)

 使い込んだ愛機を思い出として手元に残しておくのはいいですが、実釣の場にはより性能の高い、使い勝手の良い道具を使うべきではないかと思います。

 「そんなこと言ってもスピンキャスティングリールは最新鋭を使っていないじゃないか」と思われる方がいるかもしれませんが、ことスピンキャスティングリールに関しては1960年から1980年までが最も性能が高く、現行モデルはどれも精度も設計技術も劣っているのですから、比べる価値すらありません。
 そんなスピンキャスティングリールもABU-MATICや一部のオールドモデルはここのところ中古相場が急騰してきているようです。
 私は殆どを持っているので気にしませんが、これから手にしようとする人にとっては迷惑なことこの上ない状況でしょう。

 今一度、異常な価格でリールを買うことのないように、冷静になっていただきたいと願ってやみません。


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