ZILLION TW 1516-L

 2015年2月発売のこのリールを手にしたのは、既に発売から4年が経過した2019年のカタログ落ち寸前のタイミングでだった。
 普通だったら、型落ちのモデルをわざわざ買うようなことはしないだろう。
 登場の翌年である2016年2月には1000番サイズのZILLION SV TW 1016 SV-Lも登場していたし、遠投用のHLCは1514と1516も発売されていて、2018年にはヘビーデューティー仕様となったZILLION TW HD 1520L-CCが登場していた。
 2020年にZILLION TW 1516系の最終モデルとなるZILLION 10.0-L SV TWが登場し、2021年に2016年モデルのSV TW 1016の後継モデル(NEW ZILLION)が登場したことで、2015年モデル以降のZILLIONシリーズは旧モデルとなった次第。

 ハイエンドモデルのスティーズがあるのに、何故ミッドハイレンジのジリオンだったのか?
 ことの発端は今から約10年ほど前に遡る。

 うろ覚えだが確か2012年頃に、D社でリールの商品企画をしているという方が突然店に現れ、カウンター越しに『ベテラン諸兄は、何故最新モデルを購入してくれないのか、ヒントを聞かせて欲しい』と懇願された。
 2000年代後半から2010年代前半にかけての大手2社のベイトキャスティングリールは軽量化が進み、もはや我々が手にしたいと思える形状でも性能でもなくなっていた。
 競技の釣りであっても、使用することを躊躇うようなリールばかりだった。
 理由はデザインなどという生易しいものではない。
 まず、当時は急激にユーザーメンテナンスをメーカー側が拒否し始めた時期でもあった。
 何のことはない、ユーザーに知らせることなくマイナーチェンジを推し進めていたのだから、部品を注文しても取り付けられないようではメーカーの沽券にかかわる。
 また、一気に樹脂化が進んだために、傷がつきやすい、経年劣化しやすいリールばかりになっていたのもある。
 はっきり言えば魅力的なリールがなかったということだろう。
 リール設計にも世代交代の影響があることは以前から知っていた。
 D社の場合、それまで培ってきたTEAM DAIWA Zというブランドが消失し、リールの設計思想も根幹から変化した時期があったため、2000年代中期頃からそれまでのヘビーユーザーから見限られたとも聞く。
 S社も同様に、モデルチェンジの度に旧モデルから毛色が変わりすぎることと、膨大に膨れ上がったラインナップにユーザーがついてこなくなってきていると聞いた。
 逆に2000年前後の製品ばかりが珍重されるという謎の現象も起きていたらしい。(これは本当の話)
 また、バスフィッシングのブームが急速に下降するほどに、ディープなアングラーほど古アブや80年代リールを酷使している実態に気づいたというのだ。

「別に古ABUやオールドが良いからではなく、現行製品が長く使えないからですよ」
と、正直な回答を口にした。
「ユーザーが満足にメンテナンスすることが出来ない。4年後にモデルチェンジをしてしまえば型落ちとなり、使っているのが恥ずかしくなる。また、その頃にはガタが来て性能が劣化して買い替えを余儀なくされる・・・だからニューモデルを買わないんですよ」
 目から鱗の回答だったようだ。
「リールは長く愛着を持って使い続けたいんです。樹脂製のリールでは長く使い続けられない。まずは基幹となるシリーズの製品を確立して、旧モデルも魅力を失わないように作ること。ユーザーによるメンテナンスを推奨すること。特殊用途のリールを派生モデルで登場させること。メーカー純正オプションでも構わないので、改造パーツをふんだんに用意してオリジナル仕様をユーザーが作れるようにすること。まずは樹脂製のリールを作るのはやめて、メインフレームだけでもメタルボディーのリールを作ってみてはどうですか?」

 このような勝手な提案を戯言同然で言ってみたのだが、熱心にメモをとっているD社の方の眼差しがとても印象深かった。
 勿論、自分の意見だけを元にした訳ではないだろうが、2015年に登場したZILLION TW 1516-Lは、自分の提案した内容がそのまま具現化されたような形で登場したのだった。
 メインフレームはアルミ合金、新機軸のTWS、マグフォースV/Z、16lbナイロンラインを100m巻ける36㎜ワイドスプールなど、D社らしいリールとして仕上がっており、SLPワークスからも純正オプショナルパーツが豊富に用意された。
 性能的にはD社らしいマグフォース搭載型ベイトキャスティングリールだが、SV(ストレスフリー・ヴァーサタイル)設計ではないので、逆風下のフルキャストやスキッピング等のテクニカルキャストは簡単ではない。
 このリールの性能をとても気に入って、後継派生モデルはHLC以外は全て手に入れた形だが、オリジナルであるZILLION TW 1516-Lが最もしっくりきたのは、それまでのリールっぽさが残っていたせいだろう。
 ロッドティップではじき出すような、スプールに無理な力を掛けるキャスティングだとバックラッシュするのは、古いピラードフレームのベイトキャスティングリールを使っていれば嫌でも経験した事だから、当然淀みのないような無駄のないキャスティングをするようになる。
 そこでのキャスティングフィールが心地よかったのだ。
 勿論、SVコンセプトの後継機ZILLION SV TW 1016 SV-Lのような、どんな悪条件でもバックラッシュしないリールというのも確かに魅力的ではある。
 しかし、サイズ的にもコンパクトになりすぎて、しっくりこない部分もあるのだ。
 同サイズのフルメタル版でもあるZILLION TW HD 1520LーCCは使い易いが、オリジナルモデルのZILLION TW 1516-Lの方がよりしっくりくる。
 最終モデルとなったZILLION 10.0-L SV TWの方は、1016と1516の中間的なサイズで、HDモデルと同様のフルメタルボディーでありながら、よりコンパクトであるというリールだった。
 当然、ブッ飛んだエクストラ・ハイギアでもあるが、最終モデルはこのリールの完成形でもあるので優秀なリールだ。
 最も使いやすいと言えばその通りだが、フルキャストであっという間にラインのほとんどがスプールから出て行ってしまうのもびっくりさせられる。
 使用しているラインがナイロンラインの30lbクラスなので、当然と言えば当然だが・・・。

 ここへきて、流行りなのかもしれないが、PEラインを前提としたライトライン化には猛烈に反対したい。
 出会う殆ど全てのアングラー達から、「PEラインはトラブルが多い」と愚痴を聞かされている。
 何のことはない、ショックリーダーとの結束部位がガイドに引っかかるのと、濡れていないPEラインがスプール上で浮き上がるからなのだが、バックラッシュしずらくなっただけでバックラッシュをしない訳ではない、キャスティングが前提のベイトキャスティングリールにPEラインは不適だと思うのだ。
 勿論、それに慣れている方は問題ないだろうが、自分の釣りのスタイルにはPEラインは不要なのだ。
 とはいえ、太糸専用だという300番台と400番台のタトゥーラは、当然大きすぎるし重すぎる。
 1500番台サイズのボディーが最適解なのだ。
 7年落ちとなったZILLION TW 1516-Lだが、今も自身が最もフィーリングの合うベストリールのままだ。
 流石にギア比違いを全部揃えるつもりはないが、自身のベストタックルとして、いつまでも使い続けていきたいと思う。

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