BT100 日本の誇る最強のトップウォータープラグ

 ルアーフィッシングの世界では、殆どのユーザーが使いこなすことできずに低く評価されてしまった不遇なルアーが存在している。
 古くはヘドン社のルアー全般がそうであったように、日本製のルアーの中にも、稀にこのようなルアーが量産モデルの中に生まれることがある。
 その実力を目の当たりにし、自身のシークレットルアーとして偏愛している極少数のアングラーにとっては、今回の記事はあまり表に出して欲しくない内容かも知れないが、そもそも使いこなせるアングラーが極端に少ないので、たいした問題にならないだろう。

【イマカツ LOT BT100】

 イマカツ社が初めてリリースした製品で、既存のハンドメイドルアーであるLOT BT100をリメイクしたものであり、ルアー雑誌のプロモーションのお陰もあって売れに売れまくり、2004年の発売当初は誰もがこぞって手に入れたがるルアーだったことは間違いない。
 特筆すべきは、量産モデルの方がオリジナルモデルを性能面で凌駕していたことだ。(アクション面の差異ではなく、メトロノームサウンドと称するラトル音とインサートプレートによるフラッシング効果が追加されていた)
 これ一本でほぼ全てのトップウォータープラグのアクションを再現できるという汎用性と、このルアーでしかできない特殊なアクションも兼ね備えた、非常に珍しいルアーだった。
 しかし、その性能を使いこなすにはアングラー側にも相当に高い技量を要求するルアーだったことが災いし、使用した殆どのアングラーからは「ただ引きしかできない『つまらない』ルアー」という烙印を押されてしまう。

 メーカー側の思惑とは違い、真のポテンシャルを引き出せたアングラーなどは皆無に等しく、流通したBT100の殆どが中古市場に溢れかえり、その人気も急落してしまったという経緯があった。
 後にサイズアップされ、ペラも装着された形でBT122も量産化されるが、BT100のようなヒット作とはならなかった。(BT100が過小評価されたせいでBT122も同様だろうとみられてしまったようだ)

 2004年の発売当初は、自分にとってあまり興味のないルアーだった。
 実際に手に入れたのは追加カラーのカワムツが発売されたセカンドロット以降で、当時のメインルアーはエクスキャリバーのプロザラスプークや、再版されたチャガースプーク、スミスウィック社のデビルズホース等のアメリカンルアーばかりであり、本物のベイトフィッシュを模したようなリアルな造形のルアーに対して拒否反応すら起こしていたのだが、通っていた池袋サンスイで店員とガッツリ話し込んでしまい、こうなると手ぶらで帰るわけにもいかないので、仕方なくレジ横においてあったBT100を買って帰ったような感じだった。

 当然パッケージから出されることのないまま、ルアーの保管場所に積み上げられることになったのだが、その理由は本家LOTのBT100を既に使っていたからだった。

 1999年11月に発刊された『にっぽんのハンドメイドルアー大図鑑』に掲載されていた『LOT』のハンドメイドルアーが気になって、通販で「ツチノコペンシル」と「BT100」を手に入れていた。
 2000年頃あたりは既に体得していたジャークベイトの釣りを極めようと躍起になっていた時期でもあり、当時爆釣しまくっていたスミスウィック社のラトリンログARB1269を結び、芦ノ湖のオーバーハングを延々と打ち続けるような釣りばかりしていた。
 トップウォータープラグに関しては、シチュエーションベイトだと割と本気で思っていて、朝夕マズメ以外に結ぶことは皆無。
 芦ノ湖の朝夕マズメ時に散発的なボイルが発生することはよくあり、水面を飛び出して逃げるベイトフィッシュを目の当たりにしながらも、手持ちのトップウォータープラグではバスを一切バイトさせられず、もっと細いトップウォータープラグがあればと悔しい思いをしたものだ。
 ザラパピーやトゥースピック、レッドペッパージュニアなどがあればなんとかなったと思うが、いかんせん狙った場所までルアーが届かないのでは意味がない。
 数多くの手持ちのトップウォータープラグの中から選び出されたのは、キャスタビリティーが優秀で、フラッシングの強いBT100だった。
 と言ってもここで実釣投入されたのは、本家LOTのハンドメイド版BT100の方。

 事前にどのように使うのかを知らされていたわけではなかったが、BT100は連続したショート・トゥイッチで、水面で激しく明滅させることができた。
 ロッドアクションをやや大きくすると、水面をドッグウォークさせることもでき、半ばルアーをコントロールしきっているとは言い難かったが、パニックを起こしたベイトフィッシュのアクションを見事にこなし、ボイル中のバスを狙い通りにバイトさせることに成功した。

 この体験から、LOT BT100は自分の中では対ボイル用トップウォータープラグとしての地位を得たのだが、トップウォータープラグは明らかにデビルズホースがメインだったこともあり、あまり使われることはなかった。
 力ずくで投げるとコントロールを失うが、淀みのないスムーズなキャスティングでは、驚くほどキャスタビリティーが良かった。
 どちらかというと、ベイトタックルよりもスピニングタックルの方が向いていると思う。





 2021年頃から、ふと「そういえば量産モデルを持ってたな」と思い返して、ついでにストックしようと何色か集め始めたら、あっという間に増殖した。

 ついでにBT122の量産版も手に入れ、気づけばいっぱいある。

 BT122は後ろに装着されたプロペラが邪魔をして上手にドッグウォークさせられないので、ペラは外して使った。
 こうすることで、BT100のサイズアップ版として使うことが容易になる。

 2022年夏にイマカツ社から当時になかったカラー9色で復刻されたのだが、残念ながら昔の記憶が残っているためか、人気は全然ない。
 個人的には名作だと思っているが、万人に支持されるほど操作が簡単なルアーではなかった。
 こういうところが非常に難しい。
 万人に支持されたトップウォータープラグは、日本の場合、TDペンシルとサミーくらいじゃなかろうか?
 マニアックなルアーは定番にはならないのがお約束だ。
 
 

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