ニュータックル ダイヤモンドリール
ダイヤモンドリールの1978年(1977年発表)モデルに、『ニュータックル』というスピニングリールが存在していた。
サイズはNo.1、No.2の2サイズのみで、アウトスプール式のマイクロ7の血統から続く、アウトサイドキック(外蹴り)・ベールリターン方式の普及モデル。
リールに同梱されていた『各型別、性能・糸捲量一覧表』では、No.3、No.4、No.5まで拡大しているが、それらの実機はいまだかつて一度も見たことがない。
ちなみに『マイクロ7 V1』もカタログ上の記載だけで一度も実機を見たことがない。
膨大に膨れ上がったラインナップを統合する目的で、モデルチェンジやマイナーチェンジが図られたのがこの時期(1970年代末期)であり、No.5サイズまであった『マイクロ7』と『タックル5』は、新鋭の『オートベール』へと集約されていくこととなる。
『ニュータックル』はほぼ『タックル5-No.1』と『No.2』であり、お色直しされた黒と赤の外装以外は仕様もほぼ同じだった。(タックル5と比べて筐体リールフットの強度が増し、後期モデルには更にベールヒンジ部が樹脂化される)
ボールベアリングは、メインローター基部に1個のみしか使われておらず、メインギヤー(ダイヤモンドリールではギアをギヤーと表記する)の左右軸をサイドプレートに鋳込んだ真鍮製のブッシングで支持。
クランク式スプール摺動機構、スプリング式逆転爪、ヘリカルギヤーとスパーギヤーを組み合わせたミックスギヤー、アウトサイドキック(外蹴り)・ベールリターン方式等、必要最低限の仕様で作られた非常に合理的な設計のリールだ。
『普及版』という名目の『廉価版』にあたるわけだが、この頃まではフルメタル製なので、安っぽさは微塵も感じられない。
1978年に『オートベール』が登場したと同時に、それまでの『左ハンドル用の交換ネジ』を同梱するものから、左右どちらでも使えるネジが組み込まれたハンドルへと変更されていくのだが、『ニュータックル』は、これまで通りの『左ハンドル用の交換ネジ』を別梱包していたために紛失されやすく、右ハンドルから変更できなくなった個体が非常に多いようだ。
最終モデルは左右共用のハンドルネジに変更されており、ネジを組み替えずとも左右両方で使用することが出来た。
ハンドル逆側のネジ蓋がアルミ合金製から樹脂製へと変更されており、ハンドル基部のネジ交換用ボルトがなくなっていることで最終モデルを判別することが出来る。
最初に手にしたダイヤモンドリールは、インスプールタイプの『コメットGS』と『コメットG1』で、アウトスプールタイプの『タックルオートSS』も『オートベールミニ』もオートベール・リターン方式だったので、アウトサイドキック(外蹴り)・ベールリターン方式のダイヤモンドリールを使ったのは相当後になってからだった。
アウトサイドキック(外蹴り)・ベールリターン方式は、それまで古めかしいものに感じていた(ダイワ精工製『スプリンターST-900』がアウトサイドキック・ベールリターン方式だった)のだが、ダイヤモンドリールのそれは全く違っていた。
実際に使ってみるとオートベールリターン方式よりも、アウトサイドキック・ベールリターン方式の方が明らかにメリットが多いように感じた。
まず、部品点数が非常に少なくなることが挙げられる。
ベールアーム基部の「プランジャーレバー」と「ベール返しブレーキ」が不要となるので当然軽量化するし、壊れる箇所もなくなる。
オートベール機構は、ベールアームを開けられない位置があったり、スムーズに稼働しない位置もあるので、そういった部分のない外蹴りベールリターン方式は魅力的だ。
使ってみればみるほど、こちらの方がいいんじゃないかとさえ思えてくるから不思議なものである。
人気のSSサイズは存在せず、実質No.1とNo.2しかないので選択は2択のみだが、個人的には『このリールこそがダイヤモンドリールの最高傑作なのではないか』と真面目に思う。
パーツ取りにと気付けば4台も手に入れてしまったが、どこも壊れそうもない。
初めてスピニングリールを使う友人にも使わせて、その使用感を聞いてみたいものだ。
入門者用のスピニングリールとしては、現行製品よりも遥かに優秀なのではないかとさえ思える。
もし、このリールで釣りを覚えたならば、これ以降にどんなスピニングリールを使っても、トラブルとは無縁で使いこなすことが出来るだろう。
さて、話が変わるがダイヤモンドリールを偏愛するオヤジとして、ひとつ苦言を呈したいことがある。
どうも最近ツイッター等で『したり顔』でダイヤモンドリールを語る輩の発言には、看過しがたい無礼な発言が多く、とても腹立たしい。
「何ということはない普通のリール」という程度ならば問題ないが、「性能はゴミ」だの「名機扱いの割に実際はクズ性能」だの、リアルタイムで使ってきた我々をも小馬鹿にしたような屈辱的な発言には強い怒りを覚える。
今のリールと比べても決して性能は劣らないし、様々な釣行の思い出を作ってきた相棒を当時を知らない連中に小馬鹿にされるのは心底許しがたい。
これまで自分が使ってきた愛用の道具を馬鹿にされたら、誰だって腹を立てるだろう。
そんなことも分からない輩が、リアルタイムでは触ったこともないダイヤモンドリールを、さも知り尽くしたようなフリをして語るのは本当にやめてもらいたいものだ。
その点、リアルタイムでダイヤモンドリールを使ってきた同好の士には、直接お会いしたことはないが親近感を抱かずにはいられない。
ダイヤモンドリールは、最初からスピニングリールを分かっている人が選ぶ「通好み」のメーカーだった。
その中でも廉価版という位置づけのリール(『タックル5』や『ニュータックル』を始祖とし、1980年代末期の『ACTION』、『PROFIT』、『POSCA』、『TACKLE-A』、『TACKLE-7』等)は、ギリギリまでコストダウンしつつも、真面目な同社の製品づくりが垣間見える、ある意味ではダイヤモンドリールらしさが前面に押し出された製品群だったことは間違いない。
勿論、ハイエンドモデルはハイエンドモデルらしい精緻な設計があり、それはそれで魅力的だが、やはり廉価版や普及モデルの方に親しみやすさを感じる。
個人的には、末期の普及モデルであった「タックル7」に愛着を抱いてしまう。
酷評されたリール程、可愛く思えてしまうものだ。
なお、トップトウの編集長は、同時期の上位機種である「タックルシルバーSS」を愛機としていたそうで、ハイスピードギアを奢られたこれらのモデルは1990年代のスピニングリールのハイギア化を象徴するリールだろう。
末期の最終モデルは確か『ロングマイコン』だった気がするが、何気に名前やメーカーを替えて生き残っていたことを想うと、これらのダイヤモンドリール終焉期のリール達も案外悪くないリールだったのではないかと思う。
ミッチェルの『ロングショット』や、『ロングキャスト』、バスプロショップスの『メガキャスト』等、シェイクスピア以外にも随分と色々なリールメーカーのOEMを請け負っていたことがそれを証明しているようにも思う。
そんなに性能が悪かったら、そもそもOEM製造を請け負えてはいないはずだ。
釣り場で「珍しいリールですね?」と聞かれる度、「ダイヤモンドリールのOEMモデルなんですよ」と、紹介するのも結構誇らしい。
数年で壊れてしまう現行のハイエンドモデルよりも、ダイヤモンドリールの方が愛おしいく、やはりこれからも手放せそうもない。
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