伝説になってしまったA.C.SHINERS(追悼)

 「A.C.SHINERSが伝説のルアーメーカーとなることは既に確定している」と以前に書いたが、その通りになってしまった。


 2023年10月3日、A.C.SHINERSの創業者であり、偉大なアメリカン・ルアークラフトマンであったアーサー・シュルタイズ氏(97歳)が逝去。

 A.C.SHINERSは1963年7月に創業、アーサー氏が亡くなるまでアーサー氏とその家族で経営されていた、アメリカでも非常に珍しい『家内制手工業的ルアーメーカー』だった。

 A.C.SHINERSのカタログを現時点でウェブ上で見つけることは非常に難しいと思われるが、かつて運良く拾っていた画像やカタログが手元にあったので掲載します。

↑A.C.SHINERS最初の広告とされているもの
(Bass Fishing Archives『MINNOW LURE BATTLES』Posted by Terry Battistiより) 

 創業後間もない1965年頃の広告には、バルサウッド・A.C.SHINERには7種類あり、250、300、375、450、550、725、1000で、ゴールドかシルバーのカラーがあると書かれている。

 バルサウッド製の725と1000のナンバーは、この広告以降に見ることがなかったので早期に廃番となった模様。(No.1000はマスキー用として、後にシダーウッド製で制作された)


↑バルサウッド製A.C.SHINERS

↑メタルリップのダイバーとフライロッド・シャイナー

↑ヘビー・ウェイト・シリーズはシダーウッド製

↑トップウォーターシリーズの最初の2種

 画像は、1960年代後半から70年代前半頃のカタログと思われるもの。
 タイプライターで打った紙に実物を置いて撮影された、本当にアナログなカタログ。(陰影がある)
 この頃まではカラーパターンが4つ(シルバーブラックバック(銀黒)、ゴールドブラックバック(金黒)、ゴールドパーチ、オールブラック)しかなかったことが分かる。
 創業当初のフローティングミノーのみのラインナップから、徐々にディープランナーやシダーウッド製のミノー、フライロッドルアー、トップウォータープラグが登場するが、フライロッドルアーは早々に廃番、メタルリップのディープダイバーは1990年代に廃番、メタルリップのクランクベイトは2016年に最後の002Sが廃番となる。

 つい最近までシンキングのクランクベイトも作っていたことに驚かされるが、やはりA.C.SHINERSといえば圧倒的な明滅フラッシュを引き起こす、あらゆるサイズのフローティングミノーと、フレッド・C・ヤング氏のハンドメイド「BIG-O」やバグリー社の「BALSA B3」を彷彿とさせるクランクベイト『00』だろう。

最も売れたのは『No.300』

 Youtubeに2013年の在りし日のアーサー氏とA.C.SHINERSを紹介する「Making AC Shiners Bait and Lures - Made in the USA」という動画があり、これはA.C.SHINERSのコニーさんからもシェアしてほしいと言われていたので、こちらに動画のリンクを張ります。


 10年前のアーサー氏は87歳と思われるが矍鑠とされており、更に97歳までルアーを制作し続けたことは称賛に価すると思う。

 「最も売れているルアーは『No.300 』のシルバーブラックバック」と、動画でも紹介している通り、「No.300」は軽くて小さいのでキャスティングこそしづらいものの、驚くほどよく釣れるルアーとして人気が衰えないそうだ。
 動画では、約28の制作工程があることが説明されている。
 A.C.SHINERSがどれだけ丁寧に作られ、本物の釣果を約束する素晴らしいルアーであるかが良くわかると思う。

 昔、碑文谷にあった頃のThe Tackle Boxで、店長の今井氏から「A.C.SHINERSは日本でウチだけしか仕入れていない」、「ラパラよりもアクションは優れている」などと熱弁され、半信半疑で手に入れたアングラーは数知れず。
 そして実釣の場でのあまりの釣れっぷりにすっかり魅了されてしまったわけだが、後に他のモデルも手に入れたいと、ダメ元でA.C.SHINERSのウェブサイトでオーダーしてみたところ、快く対応していただいたばかりか、いくつものオマケも頂戴してしまい、益々A.C.SHINERSが好きになった。
 A.C.SHINERSを偏愛する自分の主観で、各モデルを紹介してみたい。

<バルサウッドルアー>

200:最小モデルでファットボディーのフローティング・シャローランナー
   個人的には最も好きなモデル
   どちらかといえばミノーというよりもクランクベイトに近い
   大型のブルーギルを乱獲できるランカーキラーでもある
   全長2inch、重量1/8oz

250:最軽量モデルで反則に近い釣れっぷりを誇る、フローティング・シャローランナー
   小さいベイトフィッシュにしか反応しないときにはこれの出番
   スピニングかスピンキャストでなければ投げられないが、最も小技を利かせられる
   全長2.5inch、重量1/10oz

270:2012年1月22日付で追加されたA.C.SHINERS最期の新製品
   250と300の間を埋めるフローティング・シャローランナー
   ウェイトが増して300よりもキャスティングしやすくなっている
   250が使いづらい場合には最善の選択だろう
   全長2-3/4inch、重量1/6oz

280:でこっぱちみたいな面白い扁平造形のフローティング・シャローランナー
   少しアピールが欲しい時に、激しい明滅ロールをする
   これもミノーというよりもクランクベイトに近いアクションをする
   全長2-3/4inch、重量1/5oz

300:A.C.SHINERSを代表する大人気モデル
   説明不要の殿堂入りフローティング・シャローランナー
   数々のランカーを仕留めてきた、A.C.SHINERSのラインナップでも最強ミノー
   全長3inch、重量1/8oz

300Ⅽ:300のヘビーウェイト、ファットモデル
    270の登場により廃番となるが、2020年頃までラインナップに存在していた
    300とは見分けがほぼつかない
    全長3inch、重量1/6oz  

375:ラパラのF9サイズのフローティング・シャローランナー
   明らかにラパラF9よりも飛び、こちらの方が優れていると誰にでも理解しやすい
   全長3-3/4inch、重量1/4oz

450:自身のフェイバリットルアーとなっているフローティング・シャローランナー
   初期タイプはスリムだったが、晩年のモデルはややファットな印象
   全長4-1/2inch、重量1/4oz

550:バルサウッドシリーズ最大サイズのフローティング・シャローランナー
   バスプロの間でも愛用者が多いランカーキラーとして有名
   全長5-1/2inch、重量1/3oz

00:非常に人気の高い、フローティング・ミディアムランナーのバルサクランク
  これさえあれば高額なオリジナル「BIG-O」や「BALSA B3」は不要
  全長4inch、重量1/2oz


シダーウッドルアーに関してはトップウォーターシリーズと、頑強なヘビーデューティーモデルという印象が強い。
バルサでは投げづらいシチュエーションで、シダーウッドのモデルを使うのが正解のようだ。
基本的にはバルサミノーモデルと対になっている製品(202=200、262=250&270、292(廃番)=280、302=300、402=375&450、552=550、001=00)が多いが、675だけはビッグベイトっぽいウェイキングミノーという変わり種。
 ちなみに末尾3ナンバーはトップウォーターモデルで、シングルスイッシャーの303、403、ダブルスイッシャーの203、363がある。
 363は横倒しになって浮いているというコンセプトが面白い。
 ちなみに丸ペラの203と363がお気に入り。

A.C.SHINERSのカラーパターンは、最初の2色展開から最終的に20種類となった。

 古いカタログにあった13種の他に、



3色増えて16色に。

 2013年12月7日カタログにピンクとシルバーライニング(シルバーにピンクのバックとベリー)が追加されて18色。


 2019年9月にB&B(ブラック&ブルー)が発売されて19色に。


 2021年11月28日に最期のカラーとなった、オレンジバック/ゴールド/オレンジベリー

 最終カラーは全てのモデルに採用されたわけではなかったようだが、手に入れておくべきだったなと、今更ながら後悔している。

 A.C.SHINERSのルアーはもはや海外のオークションサイトでないと手に入れることは出来ない。
 創業者であるアーサー氏の逝去によって、事業を継続することなく廃業するという潔い選択をした、シュルタイズ家とA.C.SHINERSのスタッフに最大の感謝と、アーサー氏への哀悼の誠を捧げたい。

コメント

人気の投稿